会話が弾まなかったお見合い…でも、理由は「思っていたのと違う」かも?

はじめに

婚活における「お見合い」は、未来のパートナー候補と初めて直接会う、ドキドキする瞬間ですよね。事前にプロフィールを読んで、期待と少しの緊張感を抱きながら臨む方がほとんどだと思います。

そして、お見合いが終わった後。「あの方、素敵だったな」「また会ってみたいな」と感じることもあれば、「うーん、ちょっと違ったかな…」と思うことも、もちろんあります。

先日、こんなケースがありました。ある女性会員様(Aさんとします)がお見合いを終え、私たちカウンセラーに感想を話してくれました。「お相手の男性(Bさんとします)は、とても無口で、なかなか会話が広がらなくて…。私が一生懸命、間が空かないように色々な質問を投げかけて、なんとか1時間乗り切った感じです。正直、気を遣いすぎてしまって、すごく疲れました。結婚相手としては考えられないので、お断りしたいです」と。

Aさんは、会話を盛り上げようと、本当に頑張った様子でした。カウンセラーとしても、「そうか、Bさんは緊張されていたのかもしれないけれど、Aさんが一方的に頑張る形になってしまったんだな。お疲れ様でした」と感じます。状況によっては、「雰囲気が悪くなかったのであれば、お相手が緊張していただけかもしれないので、もう一度会ってみては?」とアドバイスすることもあるかもしれません。

ところが…です。私たちがAさんから話を聞いている最中に、お相手のBさん側から、相談所を通じてお断りの連絡が入ったのです。その理由を聞いて、私たちは(そして、後でそれを知ったAさんも)大変驚きました。

Bさん側の理由は、こうでした。「Aさんは、ご自身のことはあまり話されず、私に対して質問ばかりで…。まるで面接を受けているような気分になってしまいました。私もAさんのことを知りたかったのですが、質問する時間も、きっかけも掴めませんでした」と。

…いかがでしょうか? 同じ「1時間のお見合い」という出来事を経験したはずなのに、AさんとBさんの受け止め方、感じ方が、まるで正反対だったのです。

今回は、このような**お見合いでの「すれ違い」**はなぜ起こるのか、そして、この経験から私たちが何を学べるのかについて、一緒に考えていきたいと思います。

なぜ「すれ違い」は起こるのか?

Aさんの「私が頑張って質問したのに、相手は無口だった」という認識と、Bさんの「質問ばかりされて、自分のことを聞けなかった」という認識。どちらが「真実」なのでしょうか?

私たちカウンセラーは、お見合いに立ち会っているわけではないので、その場の詳細なやり取りを正確に知ることはできません。もしかしたら、Aさんの言う通り、Bさんが極度に緊張していて、Aさんが質問で場を繋ぐしかなかったのかもしれません。あるいは、Bさんの言う通り、Aさんが緊張のあまり質問が多くなり、結果的にBさんが話す(質問する)タイミングを逸してしまったのかもしれません。あるいは、その両方の要素があったのかもしれません。

大切なのは、「どちらが正しくて、どちらが間違っているか」をジャッジすることではありません。**「同じ出来事でも、人によって全く違うように受け止められることがある」**という事実を知ることです。

では、なぜこのような認識のズレ、「すれ違い」が起こってしまうのでしょうか?

  1. コミュニケーションスタイルの違い: 人にはそれぞれ、心地よいと感じる会話のペースやスタイルがあります。たくさん話したい人もいれば、じっくり聞きたい人もいます。沈黙が平気な人もいれば、沈黙を埋めようとする人もいます。AさんとBさんの間に、このコミュニケーションスタイルの根本的な違いがあったのかもしれません。
  2. 緊張による影響: お見合いという非日常的な状況では、誰でも緊張します。緊張すると、普段通りの自分でいられなくなったり、相手の意図を誤解してしまったり、視野が狭くなってしまったりすることがあります。AさんもBさんも、緊張から、本来のコミュニケーションが取れていなかった可能性も考えられます。
  3. 「思い込み」や「期待」の影響: 私たちは、知らず知らずのうちに、「相手はこうあるべきだ」「普通はこうするだろう」といった「思い込み」や「期待」を持っています。Aさんは「会話は男性がリードするもの(でもしてくれなかった)」、Bさんは「お互いに質問し合うのが自然(でも質問ばかりされた)」と思っていたのかもしれません。この期待とのギャップが、ネガティブな印象に繋がった可能性もあります。
  4. 認知バイアスの罠: 少し難しい言葉かもしれませんが、私たち人間には、物事を自分の都合の良いように解釈したり、特定の見方に偏ったりする**「認知バイアス」**という心のクセがあります。
    • 例えば、自分が「頑張っている」と感じていると、相手の反応が薄いことを「相手のせい(無口だ、やる気がない)」と捉えやすくなります(根本的な帰属の誤りに近いかもしれません)。
    • また、一度「この人は〇〇なタイプだ」と思い込むと、その思い込みに合致する情報ばかりを探してしまう傾向もあります(確証バイアス)。 AさんにもBさんにも、そして私たちカウンセラーにも(自社会員を信じたい、というバイアスがかかりがちです!)、こうした心のクセが影響していた可能性は否定できません。

この「すれ違い」から、何を学べるか?

このAさんとBさんのケースは、私たちに多くの大切なことを教えてくれます。

  1. 「自分の物差し」だけで判断しないこと: 自分が感じたこと、思ったことが、必ずしも相手も同じように感じているとは限りません。「きっとこう思っているだろう」という憶測ではなく、相手の反応を注意深く観察したり、時には(交際が進めば)直接確認したりすることも大切です。
  2. コミュニケーションは「キャッチボール」であること: どちらか一方が質問ばかりしたり、話し続けたりするのではなく、**お互いに質問し、答え、共感し、自己開示する…という「キャッチボール」**を意識することが、心地よい関係への第一歩です。(以前の記事も参考に!)AさんもBさんも、もしもう少しだけ「相手とのキャッチボール」を意識できていたら、結果は違ったかもしれません。
  3. 「沈黙」を恐れすぎないこと: Aさんは沈黙を恐れて質問を続けたのかもしれませんが、時には**少しの間(ま)**も、相手が考えたり、次の言葉を探したりするために必要な時間である場合があります。焦って間を埋めようとしすぎず、相手のペースも尊重する意識も大切です。
  4. 「相手を知りたい」気持ちを伝えること: Bさんは「自分のことを聞いてもらえなかった」と感じたようです。もしAさんが質問の合間に、「Bさんのことも、もっと知りたいです」「何か私に聞きたいことはありますか?」といった一言を添えていたら、Bさんも質問しやすくなったかもしれません。相手への関心を示すことは、質問することと同じくらい重要です。
  5. フィードバックを真摯に受け止めること: たとえ自分にとっては意外な理由でお断りされたとしても、「相手はそう感じたんだな」という事実を一旦受け止め、自分のコミュニケーションを見つめ直す機会と捉えることができれば、それは大きな成長に繋がります。カウンセラーからのフィードバックも、ぜひ前向きに活用してください。

おわりに

お見合いでの「すれ違い」は、正直、少しショックな出来事かもしれません。でも、それは決して「失敗」ではありません。

むしろ、「コミュニケーションって奥が深いな」「人によって感じ方は本当に違うんだな」「自分にも、こういう思い込みがあるのかもしれないな」と、大切な気づきを得られる貴重な経験なのです。

この経験から学んだことを次に活かせば、あなたはきっと、よりスムーズに、そしてより深く、相手と心を通わせることができるようになるはずです。

うまくいかないことがあっても、落ち込みすぎずに、学びの機会と捉えて、また前を向いていきましょう。私たちカウンセラーも、そのプロセスを全力でサポートします!